
大切な人へ
第22章 冬休み
井川くんと並んで自転車をこぐ
話しながら帰ったけど少し喉が枯れちゃってた
「本当に歌上手かったんだな」
『いきなり2人に言っちゃうから
ハードル上がって緊張したよ 笑』
「なんか本格的だったけどなんで?」
『そうかな...昔から音楽してたし
リズム感とか音感とか ある方かもね!取り柄です』
人に自慢できるのってこれくらいだから
それよりも...
『2人って家逆だよね?今からどこか行ったのかな』
少し間があいてわかんないの?って聞かれた
井川くんは知ってたの?
「聞きはしないけど...ホテルとかだろ?」
そっか...言葉をなくす
そこから沈黙のまま井川くんの家に着いちゃった
課題を取りに一緒に入ると彼がコートを脱いだ
明るい部屋で彼を見るとぴったりした服で
体のラインが良く分かる...
分厚い胸板に大きな腕と背中...お腹はきゅっとしてる
「見とれてんの?」
意地悪な笑いでそう言われたけどその通りだ
『見とれた。井川くんってスタイル良いよね!綺麗。
これありがとう!温かかったです』
マフラーを返すと彼は私を黙って見てた...
「...あのさ」 『ん?』
何かを言いかけて彼は課題を取りにいってくれた
一瞬だったけど彼の表情が...少し悲しそうだった様な
遅いし送ろうかって言ってくれたけど
自転車だし大丈夫って1人で帰った
彼の表情が気になった
