
大切な人へ
第33章 彼の夏
その背中を見てる時に隣から小さく聞こえた
「…またかよ」
何?って聞くと教えてくれなくて
でも怒ってる感じじゃない
『今日もかっこよかったよ!凄かったね!』
「…これ貸してよかった。見えたよ美優の事」
ぽんっと帽子を撫でて優しく笑った
『私も…ずっと見てたよ 井川くんの勇姿』
多分顔は赤い…
でも彼の笑顔が見たくて
そのまま彼を見つめてた
開場から駅まで並んで歩いてる時も
彼はずっと穏やかで優しい顔をしてた
『井川くん…手繋いでもいい?』
彼はすぐに繋いでくれた
聞かなくても繋げばいいって言ってくれる
優しい井川くんが嬉しくて
繋いだ手の指を絡めて恋人繋ぎにした
日射しも強くて暑かったけど
私は彼にぴったりくっついてた
俺汗かいてるよ?って笑うけど
手は離さないでそのまま近くにいてくれる
どうしちゃったの?井川くん
なんか優しすぎてちょっとこわいよ 笑
でもすごく嬉しい
電車の中でも手を繋いだまま立ってた
少し混んでいた車内に乗じて
彼の大きな腕にもう少し…体を寄せてた
