
大切な人へ
第33章 彼の夏
朝練があるからHRのギリギリに教室にくる
おはよってまた優しい顔で言ってくれる
嬉しいのとちょっとざわざわするのって
あの気持ちだよね…
今日は試合があるから学校をお昼に出る
応援行きたかったけど行けない
代わりに見送りの時 校舎の陰でぎゅってした
頑張ってねって
ありがとって言って
ちゅって軽くキスしてくれた…
真っ赤な顔で手を振って見送った
その日も試合には勝ったってメールが入った
井川くんはどんな気持ちで戦ってるんだろう
彼も小さな頃から甲子園を目指してたって
お母さんが言ってた
プレッシャーはもちろんあるよね
こわかったり不安になったりもするよね
私ね…少しは気持ちわかるよ
井川くんはそんな時ってどうしてほしい?
抱きしめたらほっとする?
私と一緒で1人で集中したい?
次の日私はバイトが休みだったから
1人でグラウンドに行った
野球部の練習が見える少し離れたところ
彼はマウンドの上でボールを何度も投げていた
