
大切な人へ
第37章 強くなりたい
次に一緒に入った日
その子はいつも通りの感じのまま仕事は終わった
外の鍵を閉めて近くで待っていてくれた
井川くんの元に走った
『ごめんね…やっぱり大丈夫だった
遅くに待たせてごめん!』
「何言ってんだよ…何もないのが一番だろ?」
彼はちょっと笑いながら
ぽんって背中に手をあててくれて
そのまま家に送ってくれた…
彼だって受験生なのに
こんな時間に来てもらうなんてやだな
これじゃ本当にボディーガードだよ…
彼はその次も その次も来てくれた
シフト教えなくちゃ毎回来るって言うし
放課後帰り際に話した
『ねぇ…今日も来てくれるの?』
「まだそんな顔してんのかよ…
彼女の心配すんのがそんな嫌か?」
悪いからって言うと
俺が好きでやってるからって…
私は彼にぎゅって抱きついた
『ごめんね…心配かけて!
でも私も井川くんのこと心配なの!
勉強とか井川くんの時間の邪魔したくないよ』
ふぅって吐く息が小さく聞こえた
「美優…いつもあんなに遅くまで働いてたんだな」
彼は優しく私の背中に手をまわした
「それでまた家の事して…また学校来てさ
バイト休みの時は家の事して勉強?
どんだけ頑張ってんだよ
俺の時間なんていくらでもある
俺よりも美優の方が時間ないだろ」
だから気にしなくていいってぎゅってしてくれた
でもそれは関係ないよ
それは自分で選んだんだもん
