
大切な人へ
第55章 家族だから
そっか...
井川くんもしかして気付いてたの?私の気持ち
なのにずっと...
私の前では笑ってくれてたの?
『真樹さん...井川くんのこと好きですか?』
真樹さんは関係ないでしょって
なかなか教えてくれなかったけど
好きだって言ってくれた
『井川くんの事...いっぱい愛してあげてください!
私にはもう何もできないから...
お願いします!』
パァンッ‼
一瞬で左頬が熱くなった
「なんであんたみたいな奴と付き合ってたのよ‼」
顔を上げた瞬間ぶたれた...
彼女はそう言って帰ってしまった
顔がジンジンする...
女の人でも痛いんだな
「真樹ちゃん怒ると恐いねー」
少し笑いながら違う方から出てきたのは
清水先輩だった
彼は冷たい缶ジュースを買ってくれて
痛む頬にあててくれた
私たちの話しを聞いてしまったお詫びって...
「どうなってんの君ら?
部内の空気悪くしないでほしいな」
『ごめんなさい...
井川くんと話したくて来たんですけど』
渉くんが言ってた
先輩は私の事を気にしてくれてたって...
「藍野さん井川と別れたの?
あんなに好きだって言ってたのに」
『彼は...大事な人です
前に家族だって言ってくれたことがあって...
私もそう思ってます』
私はあえて別れたかを答えなかった
あのいきさつは他には伝えない方がいい
先輩は暗い表情で話し出した
「井川はね...藍野さんには会いたくないって言ってた
もう別れたんならその方がいいかもね
多分会っても藍野さんが嫌な思いするだけだよ」
私は何も言わず
彼に頭を下げて
グラウンドから帰って行った
