
大切な人へ
第59章 私のしたいこと
始めのピッチャーは違う人から始まった
試合が進んで相手の点数が増えていく...
4-0になった時に井川くんがマウンドに立った
私は黙って彼が投げる姿を見ていた...
春になって彼はマウンドには立ってるけど
あまりうまくいってない感じなの
ベンチでも表情が暗い
投げた球は打たれたけど守備が守った
苦しそうな彼を見てると私も苦しかった
「やばい...美優ちゃん離れて‼」 え...?
ぼーっと見てる時に翔ちゃんの声に反応が遅れた
__わっっ‼
「__った~... ごめん!大丈夫?」
鋭く飛んできたファールボールを翔ちゃんが
目の前で受け止めてくれてた
『私は大丈夫...ごめん!翔ちゃんは⁉』
立ち上がってすぐ受けたボールの勢いで
私の方に倒れて一緒に転んでしまってた
大丈夫って笑ってるけど痛そうな顔してる...
「悪い...大丈夫か?」
すごく久しぶりに聞いたその声
すっと差し出された手は
翔ちゃんに向けられていた
彼を立たせて座ったままの私を一瞬見て
彼はボールを持ってマウンドに帰っていった...
私って気付いても何も言わなかった
手もかしてくれなかった
翔ちゃんはケガもしてなくて
足がちょっと痛かっただけみたい よかった...
彼にごめんって言って
先に帰った...
