
大切な人へ
第8章 いらっしゃいませ
「もう洗う?手伝おうか」
『いいですよ くつろいでて下さい』
食器をシンクに運びながら
そう言って私はテレビをつけて背を向けた
黙々と洗い終わり振り向くと
先生はベットの上で壁に寄りかかり
座ったまま寝息をたてていた
もう12時を過ぎていた
そっとテレビを消して
足音をたてないようにお風呂に向かった
何も身にまとわない 鏡に映る自分の姿を見つめ
今日先生に触れられた体を洗う…
その感触はまだ覚えている
トクン… トクン…
少し早い振動は
心地いい様な
苦しい様な
不思議な感じがした
髪も乾かし歯も磨いて部屋に戻ると
彼は先程の場所のまま倒れてしまったように
丸くなって寝ていた
体の半分くらいまで布団をかける
そっと近付いて見た寝顔はとても可愛いくて
年上の人に失礼かもしれないけど…
愛おしい そんな言葉が似合う気がする
初めて抱く そんな甘い感情に浸る
少し目元の近くに手を伸ばしてみる 反応はない
寝てるよね?
そっと顔を近付け
目の少し下に
音のしない小さなキスをした
『おやすみなさい…』
使われてない枕をとって私はすぐ横の床で寝た
