
大切な人へ
第11章 2学期の始まり
バイトから帰ってお風呂に入って
先生にお詫びのメールを入れる
心配してくれたのに嫌な言い方して
ごめんなさい
すぐ既読になるけど返事がない
ピンポーン
こんな時間の急なチャイムに驚く
ピンポンピンポンピンポン!
...えー? 笑
スコープを覗いてからドアを開ける
『来ちゃうんですね。
お風呂上りなんですけど...』
「俺も」
にこっと笑う彼を部屋に入れる
それは本当だったようで
少し髪は濡れていてジャージだった
とりあえずコーヒーを入れて
向かいに座る
「藍野さんが勉強頑張ってるのは
いい大学行きたいからだと思ってた」
『違います。母と約束したんです。
勉強も頑張るから家を出たいって。』
「そっか。行きたくないの?」
『就職ってそんなにいけませんか?』
「本当にそうしたいのか聞いてる」
彼にまっすぐ聞かれると弱い
『...格好悪いから言いたくなかったのに
入学金も学費も払えないからです。
奨学金だって返さなきゃいけないし
そこまでして行きたいとも思わない。
仕事も何がしたいとかないので
大卒の資格がほしいとも思わないんです
この学校の卒業生の就職先を見ましたけど
いい企業多かったし そんな会社で働けるなら
自分もそれでいいと思ってます』
可愛くない答えをべらべらと話す自分が
すごくいやだ
