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飴と鞭と甘いワナ

第1章 scene Ⅰ



あの衝撃的とも言える出会いから、さっぱりヤツの姿を見なくなった

暇さえあれば外を見て

気が付けばお客さんの相手をしてても、店の外を歩く人に目が行ってしまう。

似たような格好の人を見つけては

…違う、アイツじゃない

なんて、無意識に溜め息ついたりして。




もう、あの日から1ヶ月近く経つ。

諦めるようかなぁ…


閉店後の店内

掃除を終えた俺は、何となくロールスクリーンに指を突っ込んで外を眺めていた。

それでも夜道を歩く人を目で追ってたら



「あ…っ!」

思わず声が出てしまった。

だって

あの横断歩道に立ってこっちを見てるあの姿


あの時と変わらない、ショボくれた格好。
手にはコンビニの袋


間違いない

ー…見つけた!


俺はスクリーンから指を抜いて、慌てて店を飛び出した。

今まさに点滅の横断歩道を渡ろうとしてるソイツの腕を思わず掴む。

驚いて振り返ったソイツは目をまんまるにしていた。


「ちょっとアンタ…」

走ったから、息が荒い。

掴んだ腕に少し力を入れる。


「カットモデルやってよ」



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