
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
『了解!心配掛けてごめんね』
早く行きたいから、スタンプも絵文字もなしで
返信する
スマホを助手席に放り投げ、ブレーキを解除すると、俺はアクセルを少し踏み込んだ
楽屋を出る時に電話は入れてみた
だけど虚しくコール音が鳴るだけで、にのは出なかった
LINEもしたけど、既読すら付かない
まあ、そこは想定内ではあったけど
翔ちゃんからの次のLINEで、皆もにのと連絡が付かない事を知って
不安が一気に押し寄せて来た
「あった…」
マンションの駐車場に、にのの車はあった
安堵して、来客用に止めた俺は足取り軽くインターホンを鳴らした
だけど
一向に応答はなく、何度鳴らしても返ってこない
仕方なく、前に貰っていた合鍵を使って中に入る事にした
謝るとか、そんなのは置いといて
まずはにのがいるかどうかが先だ
マネージャーの、"様子がおかしい" の一言が頭を巡る
エレベーターに乗り込み、にのの住む部屋に向かい、玄関の鍵を開ける
「にの?…いる?」
そっとドアを開けて、真っ暗な廊下を進んだ
電気を付け、見回すけど
にのが帰った形跡はなかった
