
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
“暗いからバレないよ“
“楽しみだね“
所々の会話は何となく甦ってきた
暗い…?
えーと、暗い場所と言えば
「あ!!」
またも声を出してしまった
しかも今度は駐車場とは言え、外
口を抑え、急いで車に乗り込む
ルームライトが消えるまで、とりあえず体を縮こませて身を隠した
やがて真っ暗になった車内に、ホッと溜め息をついて
エンジンのスタートボタンに指を乗せる
静かに車が走る準備を始めた
操作可能になったナビに急いでその場所を打ち込んで行く
行き先は、多分
……映画館
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立体駐車場に車を止めて、伊達眼鏡を掛ける
下手にキャップを被ったりするよりもこれの方が案外気付かれない
俺に眼鏡のイメージがないから、なんだろう
急ぎ足で歩きながら、エスカレーターに辿り着く
まだまだ人の多い時間
掻き分けて昇るのも気が引けて、おとなしくエスカレーターに身を任せた
真ん中を過ぎた辺り
ふと見た反対側の下りのエスカレーターの上の方に見えたのは
キャップを目深に被った尋ね人…じゃなくて探し人
