
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
A side
「やられたー!」
主のいない部屋で、思わず声が出た
車があるから家にいるなんて、余裕ぶった俺がバカだった
あのにのが、あの状況で真っ直ぐなんて帰るわけないのに
“もしかしたら“ なんて無駄な期待して
合鍵使って開けたところで、玄関見りゃ靴がないって分かるのに
わざわざそーっと中に入ったりして
それこそ “やられた“ じゃないっての
自分で口に出しておきながら、何言ってんだ俺
とにかくにのを確保しなきゃ
…慌てて外に出たのはいいけど、行く宛を考えなきゃどうしようもない
にのとどんな話してたっけ?
それを辿って行けば何かヒントが見つかるかも知れない
この間、久しぶりに一緒に飲んで過ごした時間の会話を必死に手繰り寄せる
他愛ない話と、バカップルみたいにイチャイチャしたのはすぐに思い出せるのに
肝心なヒントになる会話が出てこない
何か話してた気がするんだよな
にのが、「今度一緒に行こうね」って笑ってて
…少し酔ってたのもあって、その顔がやけに可愛かったのは覚えてる
どこだったかな
そんな難しい場所ではなかったはずなんだけど
