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飴と鞭と甘いワナ

第6章 HurryUp! episode 1

えっ?帰った!?

ドア向こうのオーナー氏の足音が遠退いて。

店も終いになったのか、物音ひとつしやしない。

見も知らぬ場所に一人きり。

自業自得と云われればそうなんだけど。

どーする?どーしたらいい?

心中の焦燥感だけが半端なくグルグル回る。

も一度スマホの画面をタップしても、着信もメールもピタと鳴りを潜めたまま。

胸がツクンと疼く。

アイツは……

送信時間を辿れば俺が楽屋を飛び出した瞬間からのあれこれ連打されてる。

何が "必死さを見せるのが遅い" だ。

何様なんだ、ってーの、俺は。

あまりにも身勝手な愚痴に我ながらほとほと嫌気が差す。

メールもLINEも今更返せやしない。

得意気にアカンベーした自分の幼稚な馬鹿さ加減に泣けてくるし、もうなにやらかやらで気分は一気に凹むわ、で もう泣きっ面に蜂状態。

気を紛らそうと手にしたゲームも一向に集中出来ずの踏んだり蹴ったり。

アイツのコトしか頭にないのも何だか悔しくて。

スニーカーを脱ぐとゲーム機と一緒に薄い上掛けを引っ被った。

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