
飴と鞭と甘いワナ
第6章 HurryUp! episode 1
気づいたら朝だった。
見慣れない低い天井。
目から入る情報がまだ頭ン中で上手く処理出来ない。
寝起きはいつもこんなだ。
胸元に3DSが開きっぱなしなのは戦闘中、コマンド選択してる間に寝オチしたっぽい。
脳内逆回転、昨日へ巻き戻って再生開始。
この部屋に連れられたのは確か夜半近く。
部屋の雰囲気に馴染めないまま、ベッドの端へ腰掛けて。
おもむろにスマホの画面をタップすればアイツからの夥(おびただ)しい着信とメール、そしてLINE。
<<何処に居る?>>
ひたすらそれの繰り返し。
この必死さをもっと早く見せろよ…って思うのは単なる俺の我が儘か?
「……遅せぇーよ」
そのまま後ろへ倒れ込んで目を閉じた。
電車の音。
パチンコ屋の店内放送。
それに混じって聞こえてきた途切れ途切れの怒鳴り声。
……相葉さん!?
その激しさに思わず起き上がった。
アイツのそんな怒声、未だかつて聞いたコトがない。
2、3分は続いたその声が急に止んで、しばらくしてからドアがノックされた。
顔を上げれば
「…帰ったで」
オーナー氏が一言だけそう言った。
