
飴と鞭と甘いワナ
第2章 scene Ⅱ
普通ならお客さんには、顔に小さなガーゼのタオルを被せるけど
雅紀にはいつも掛けてあげてない。
本当は初めての時に、うっかり被せるのを忘れてて
…それを言うのも変なプライドが邪魔して出来なくて
だけど雅紀自身、美容院に縁がなかったから
それが当たり前かと思ってたみたいだし
その時の
なすがままに目を閉じてる雅紀の顔がね
あまりに無防備で
目が離せなくなったんだ。
「お湯掛けるよー…」
「んー…っアチっ!熱い!!」
雅紀がビクッと跳ねた。
…あ、温度確かめてなかった。
手で触ってみたら
…あはは、確かに熱いや
「ごめんごめん」
雅紀の慌てた様子がおかしくて、思わず笑いながら謝ると
「俺を殺す気かっ!」
なんてムキになって文句言うから
「うわっ!冷てっ!!」
…今度は水をかけてやった。
「だって熱いっつーから」
「ニノの鬼!悪魔!!」
ー…エスタークの次は鬼に悪魔かよ
ひとしきり遊んだら、真面目にシャンプーに取り掛かった。
雅紀の髪は、本当に触り心地が良くて
洗っている俺の指が、喜んでるのが伝わってくる
