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飴と鞭と甘いワナ

第9章 1匙め



A side

隣で姦しく発せられた奇声に起こされ、それが怒声になったかと思った途端に鳩尾へドスと何かが乗っかった。

グエッと蛙宜しくひしゃげた俺の声を、これまた踏み倒す勢いで

"早朝会議!!"
絶叫した騒々しい気配は寝室から出てった。

腹に疼く痛みを摩りながら欠伸を一つ。

サイドテーブルからタバコを取れば見事空っぽ。

無いと分かると余計に吸いたいくなるもんで。

しようがないから吸い殻の山から長めのしけもくを探す。

紅い口紅の付いたのを咥え、少し捩れた先を指で伸ばして火を点ける。

メンソール混じる軽い煙をフーッと吐いた、そのタイミングで

「相葉くん!」

怒鳴り声の主は

「ショーコさん」

俺より2つ歳上の…彼女?…セフレ?じゃないと思う。

そんな俺のダダ洩れな曖昧模糊を睨む様に柳眉が逆立ち、纏うオーラが

"早く起こしてって言ったでしょ!"

美人は怒っても美人かと思いきや般若になるって悟る今日この頃。

こう云う手合いは逆らわずとっとと追っ払うに限る。

だからチラと壁の時計に目をやって

「時間…大丈夫?」

スゴい勢いで彼女は部屋を飛び出してった。

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