
飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
辺りを見渡せば剪定された植え込みの暗い影に小さな背中が見えた。
「二宮さん」
その声に振り返ったのはやっぱり彼で。
エレベーターの中であれこれ聞こうと考えていたコトは二宮さんの青白い顔を見た途端、吹っ飛んでた。
「びっくりした」
おどおどと居た堪れない…そんな竦んでしまってる身体を堪らず俺は掻き抱いた。
固くなに握り締められ手から食み出してる小さなメモ書き。
見慣れた数字の並び……これって此処の住所じゃん。
大野さんの字だな…ったく、個人情報もクソもあったもんじゃない。
俺のデータはそっから入手したんだな。
それはそうと……放課後、初めての友人宅訪問じゃないんだからさ、こんなに握り締めなくても。
健気な懸命さに絆(ほだ)されるじゃん。
「…………ゴメン」
小っさな呟きが聞こえた。
腕を少し緩めると、まるで仔犬が身振いするみたいに身体をフルリと揺らし
「ゴメン…俺 勝手に…」
俺の胸をポンと突いて二宮さんは後退りした。
