
飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
A side
俺の顔を不審げに覗く彼女。
「友達が来てる」
有り体な言い訳にしか聞こえなかったンだろうな
「嘘!」
返しは金切り声。
"オンナでしょ!"
そう言いたくてもプライドが邪魔すんだろうな。
理性をどーにかこーにか総動員させて冷静になってるつもりなンだろうけど…頬 ヒクついてるし こめかみに青筋…まるで鬼女だな…超ウケる。
自分のモノが他人に心を傾け出した途端に惜しくなるって典型的なヤツだ。
その露骨で下卑た態度にほとほと嫌気が差してくる。
とにかく今優先したいのは彼女じゃない。
慌てて部屋を飛び出た。
下りのエレベーターは直ぐに降りて来なくて。
焦れてボタンを連打してしまう。
"早く行かなきゃ帰られる"
そんな俺のイラつきなんか何処吹く風…そんな暢気さでポーンと軽やかな音を立ててエレベーターがやっと降りてきた。
ゆっくり開くスライドドアを手で強引に開いて乗り込んで。
足踏みしたって速くなるワケじゃないのに足が勝手にバタバタと逸る。
9…7……止まるな…4…一気に降りてくれ!!
浮遊感が収まるか、否かのうちにエントランスへ飛び出した。
