
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
A side
「お疲れっした」
担当コースの今日付の荷物を配達して、集荷して回る。
事務所に連絡用スマホを戻して、タイムカードを押せば業務終了。
ここで一段落ついて。
談話室で屯(たむろ)ってるドライバーさんへ会釈してからロッカールームに入る。
先ずやるのはスマホチェック。
相変わらず何も入ってないし。
見るだけ無駄っつーか。
でも…
思わず開いた着歴。
"二宮和也"
昨夜23時半のやり取りを思い返す。
突然の着信。
床へ置いてた開けたばっかの
缶ビールを蹴飛ばした。
慌てて出た相手は
フテたみたいに早口なニノ。
" わざわざ掛けたんだろうが "
終始噛み付く様な、
そんな物言いが珍しくって。
だから却ってなんか
俺のが冷静になる。
"リベンジはいつ?"
って責っ付くから。
"そんな楽しみに
してくれてンの?"
危うく返しそうになる心にブレーキを掛けた。
淡い期待は
しない、持たない、考えない。
努めて淡々と。
逸る鼓動、どうにか静まれ。
