
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
大野さんは、俺の表情なんか気にもせずに
尚も喋り続ける
「指の動きと顔がさ、全く正反対でさ…
カットの時も、そうなんだよ」
“見てるこっちが照れちゃう~っ“ なんて言いながらふにゃっと笑った
「いや、えーと…あの…」
ダメだ、うまい言い訳が見つからない
だって
…絶対違う!と言い切れない事は、自覚しているし
誰にも見られてない時くらい、素直になってもいいかなーなんて思ってた
「にのってさー…好きな人ほど、苛めたくなるタイプだよね」
「は?」
「ほら、良くあるじゃん
好きだから、どうして良いか分からなくて
ついつい意地悪しちゃうとかさ」
「…俺は小学生かっつーの」
俺の呟きに、大野さんが大爆笑する
笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭いもせず
「それだ!!まさに小学生!」
ご丁寧に指まで差しやがった
ひとしきり笑ってから、…笑い疲れたのか
大野さんは目の縁に溜まった涙をグイッと指で救うと
「…少しは素直になったら?」
そう言って、真っ直ぐに俺を見た
