
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
何賭けた?
…何も賭けてない。
ただ、いつも遊びの延長で勝負すると
雅紀が毎回負けてるから
負けたから飯奢るとか、タバコ買うとか
そんな程度の事だ
それに今回は雅紀の提案に乗っただけだし
負けっぱなしの雅紀が、リベンジ!って騒いでるだけの事。
「え、別に何も賭けてないけど」
俺がそう答えると、大野さんが身を乗り出してきた。
「それじゃあ、勝負する意味ないじゃん!」
「は?何で?」
「だってにのは、勝つ度に良い思いしてんだろ
…なら、相葉ちゃんが勝ったらどうするの」
「…まず、勝てないし」
当たり前のように笑った俺に、大野さんが人差し指を目の前に突き出した。
「分かんないよ?そんなの、
…だって、ビリヤードでしょ?」
何それ
大野さん、雅紀の事何か知ってんの?
「どう言う意味よ…」
その人差し指を払い退けて、大野さんをじっと見る。
「別に?…勝負に絶対はないって事だよ」
大野さんは、意味ありげにニヤリと笑うと
「相葉ちゃんが勝った時の事、考えなよ」
“さ、潤に怒られるから支度しよ“ なんてブツブツ言いながら
俺の前から立ち上がって、洗面所に向かった。
