
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
それからは大野さんの言葉が引っ掛かって仕方なかった。
でも、何回聞いても “勝負に絶対はない“ を繰り返すだけで。
結局何も分からないままの、迎えた木曜日
明日の時間を、雅紀に連絡する約束してた日。
明日は確か、予約も16時がラスト
カットだけだから、終わって家に帰って着替えても
…19時に間に合うか
昼の休憩時間になって
裏口の喫煙スペースでくつろきながら、スマホを取り出した。
メール画面を開いて、雅紀のアドレスを出す。
『19時ならOK』
これだけを打ち込んで、送信させる。
余計な事は書かない。
だって俺は、時間の事しか約束してないもん。
“送信しました“
の文字を確認すると、すぐにそれをポケットに
仕舞って
代わりに取り出したタバコに火をつけた
明日が楽しみだ
大野さんが何と言おうと
…何か知っていようと
絶対雅紀には勝ってやる
…ゆっくりと、紫煙を吐き出しながら
俺は太陽の光を避けるように、そっと目を閉じた
