
飴と鞭と甘いワナ
第3章 scene Ⅲ
「ウチの二宮がちょっかい出したみたいだケド…」
"悪かったね"
なんて先に謝られちゃて。
つか、ちょっかいって………
俺等の5W1Hの
全て知ってる様な口っぷり。
何知られてる?
見られちゃってた?
見かけのヌボーッとした感じと違って大野さんってば意外と鋭い。
『gelb-grun』
のオーナーだし。
店内にはニノ以外の気配は…
ん?…無かったよね?
しかも、あン時やってたコト…
って何思い出してんだ、
俺の馬鹿ーっ。
思い返すに顔が熱くて………。
「………お客さん?」
「は、はい!?」
裏返った声に怪訝な顔するレジのお兄さん。
"早くしろっ"
威嚇してくる目。
あ、ヤバ……並んでたっけ。
…の途端、ウワァって焦って。
ポケットの小銭を床に散らかしちゃうわ、スマホ落とすわ……以下略。
後ろの警備員のおっちゃんがやれやれってスマホ拾ってくれて
"ほら、バイブってンで"
お礼もそこそこに俺は釣り銭とレシートをビニール袋に詰め込み、マッハで店を飛び出した。
