
culb Colors
第1章 【cast1】ミク
「あ、ミクくんだ!」
「おはよー、デブ」
俺は飄々と真央の前に座る。
本当は心臓が痛むほどバクバクいっている。
「飲むわー」
「うん、飲んでー」
緊張してグラスを持つ手が微かに震える。
「てか、さっきの何?何を卒業するの?」
俺は目を合わせずにグラスにシャンパンを注ぎながら聞いた。
「あー、うん。colors卒業。お世話になりました」
真央がニッコリと笑う。
真央は冗談でこんなこと言う子じゃない。
(本気なの?)
「意味わかんないから。なんで?他にいい店見つけた?」
「ううん」
「じゃあ彼氏できた?」
「違うよー」
「じゃあなんで」
なんてことないような真央の態度に、俺はイライラを隠せなくて口調がキツくなる。
(寂しいのは俺だけなの?)
落ち着け、と自分に言い聞かせてシャンパンの入ったグラスを上げて、真央と乾杯する。
グイっとシャンパンを飲み干して、息を整える。今日のシャンパンは何の味もしない。
「本当にもう来ないの?」
「…うん」
「ヤダ!」
「ヤダって…(笑)」
「ヤダ!」
真央が困ったような顔をする。
