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第1章 【cast1】ミク



「…真央」


「!」



「…星司くん、…おかえりー」


後ろから星司の声が聞こえた。


「…ごちそうさまでした」


俺は俯いたまま、強引に乾杯をして席を抜けた。

罪悪感から星司の顔が見れない。


俺はそのままスタッフ用のトイレに入って、顔を洗った。



店内ではラスソンが始まる。
今日のラスソンは星司。


星司の低くて艶のある歌声は、どことなくなく切な気で、胸が締め付けられるようだった。



(真央は星司の隣で、どんな気持ちで、どんな表情で、これを聴いてるのかな)




ラスソンが終わって、俺は店内に戻った。


明るくなった店内に戻ると、入り口付近でちょうど帰ろうとしている真央と星司と鉢合わせてしまった。


(そうだ、真央はチェックを出したらダラダラせずすぐに帰るタイプだった…)


「…ミクくん、ありがとう」



真央が口を開いた。


「じゃねー…」


真央が手を振る。
せっかく引っ込んだ涙が、また出てきそうで焦る。


「じゃあな、デブ。夜中にアイスとかポテチとか食うなよ。…本当にデブになるぞ」




最後の軽口。
振り返った真央が、本当に本当に嬉しそうに笑った。


「ポテチは食べるよー!好物だもん!」


「デーブ!」


「童顔ー!」


 

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