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針の山

第1章 針の山


「私の知っているのは
これが全てです」

 そう言うと彼女は、
心の中に溜め込んでいた物を
全て吐き出すかのように
大きな溜息を零した。

 ハート型の赤い針山。

 それは今、目の前にある。
彼女の裁縫箱の中に鎮座して。

「ねぇ、その針山って
話の中の針山と同じなの?」

 私は真っ赤なピンクッションを
見ながら、彼女に尋ねた。

「さぁ、どうでしょうね?」

 そう言って笑みを浮かべる彼女。


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