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虞犯少年

第28章 鉄色の思い出



どこへ向かっているのか、そこには何が待っているのか、考えただけで身が震えた。

窓の外の景色なんか見てる余裕もない。

車内に流れる音楽は耳からすり抜けていく。



「なんで…こんな事するの」


「目障りなんだよ、アイツの存在自体が。チームにも入ってない一匹野郎がここまで恐れられてんだぜ?それは九条新の影響力だけじゃない。現に今まで誰もアイツを潰せなかった。その九条嵐を潰せば俺たち"鵺王"の知名度も上がる」



真碕は口元を緩ませた。それは自分たち鵺王が最も強くあるべきだと主張する。

やっと私はこの頭でも理解できた。真碕は自分たちチームの為に嵐を潰したいんだ。

こういう世界に争い事は必要で当たり前かもしれない。誰だって一番を望む。

でも、嵐は来るのだろうか…一度芽生えた不安はそう簡単に消えてはくれない。

だって私は嵐の女である事を拒否した。

会うのが怖い。

弱味として足を引っ張る女なんか嵐はいらないでしょ?

私がもっとしっかりしてればこんな事にならなくて済んだのかもしれない。





「――…もし、来なかったら?」


「来ない訳ねーだろ。こっちにはあんたが居る」



その自信は何なのか。いくら私が居たって"絶対来る"保障はどこにもないのに。

他人の為に傷つくなんて嫌に決まってる。

最強の男なら尚更。女一人のせいでその身がどうなるか、考えただけで血の気が引く。

嵐は簡単に人を裏切る事が出来てしまう人間だから私を突き放す事なんか容易い。





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