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虞犯少年

第28章 鉄色の思い出




「来ないよ、きっと」


「明日香ちゃんはなーんも分かってないんだね」



真碕は意味深な言葉を吐き出して運転をしてる人に「音消せ」と指図をした。

「はい」と返ってきた返事と共に流れてた音楽は消える。

どうやら彼は真碕に対して敬語を使っている。っていう事は少なからず真碕の立場は上。一気に車内は静まった。自分の声が微かに震えた。




「…なんで言い切れるのか分かんない」


「なら一つだけ良いこと教えてあげる」


「え…?」


「九条嵐を潰したいのは俺らだけじゃない。誰だってアイツの女である明日香ちゃんに危害加えようと考える。でも今まで何も出来なかった。なんでか分かる?」



疑問を投げかける真碕は私を試すかのようで。分からないと首を振れば曖昧に笑った。



「明日香ちゃんは知らないだけで本当はかなり狙われてた。危なかったと思うよ?いつ拉致られてそっこーヤられたって可笑しくない状況にいたんだから」



"それに比べて俺たちは優しいだろ?"そう耳元で囁かれた。ぞくぞくと寒気が肌を伝う。

私、そんな状況で生活してたの?

知らない。知らなかった。

嵐と関わる事がこんなにも危ないなんて。

今だから染みた。真碕が言う一つ一つの言葉がもしかしたら現実になってたのかもしれない。指の先がひんやりと冷たくなる。

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