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虞犯少年

第28章 鉄色の思い出




「それをさせなかったのは九条嵐だ。アイツがずっとそばで明日香ちゃんを守ってた。一度、明日香ちゃんに接触しようとしたチームがいたけどそのチームは全滅。何があったのかなかなか情報が漏れないから詳しくは知らねぇが九条は『死ぬ気があるなら来い』って。それで明日香ちゃんを狙う奴らもだいぶ減ったんだけど」



泣きたいのか泣きそうなのか自分でもよく分からない。

視界がジワジワとぼやけるのを手で擦って止める。


何よ、それ…私、全然知らなくて…嵐が守ってくれてたなんて…知らないままが良かった。知ってしまったらもう元には戻らない。

だから私は知らない私でいたかった。

嵐は狂った愛の持ち主、それだけで十分。

だって全てを受け入れたら、私が私でいられなくなる。一緒に堕ちる覚悟なんて出来てないから。


何も言えない悶々とした感情を抱え、向かっていた場所に着いたのか車が止まる。

そこには古びた倉庫が立ち並んでいた。

真碕は私の腕を痛いくらいに引っ張って、厚く冷たい倉庫の扉を開く。




「っ……!!!」



思わず腰が抜けそうになった。全身の力がなくなる。声にならない。体が動かない。目を見開きパチパチと瞬きを繰り返す私はただその場に立ち尽くすしかなかった。



目に入った光景は血の海。
鉄と土と血の臭いが混ざり合う。
そこに広がる世界は鮮やかではない赤一色。





鉄色の思い出

(錆び付いて、動けない。)


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