
虞犯少年
第30章 そうして私たちは答えを知る
異様な雰囲気が包む。不自然な静寂に息をはぁはぁと乱す嵐が真っ赤な手で私の頬に優しく触れた。
「赤くなってる」
「…これぐらい平気」
私なんかより嵐のほうが心配であちこちに目線を配る。どうやら怪我はしてない様子にホッと胸を撫で下ろした。この人数相手に無傷とはさすがの嵐でもありえない。
「もう誰にも触らせねーから」
私を見つめる目が切なくて心臓が掴まれたみたいに痛い。
嵐は悔しそうに唇を噛み締め最後に一発お腹に蹴りをいれた。
無抵抗な真碕はちゃんと生きてるのか不安で恐る恐る目線を下げて見た。
―――よかった。ちゃんと息をしてる。
「明日香が止めなきゃ殺してた。まだ殴り足りねぇ」
誰もが嵐の声と表情にヒッと息をのんだ。
今の嵐にはここに居る誰も勝てない。
非道なまでの強さに憧れ、憎む人たちが何人いるというんだろう。
興奮が冷めない嵐は倉庫内にその声を轟かす。
