
虞犯少年
第30章 そうして私たちは答えを知る
「覚えとけ!立花明日香は俺の女だ。人の女にこんな真似して生きてられると思うな」
その姿勢は獣のようで怖い。だけど美しい。
いつまた暴れ出すか気が気でない私は嵐の服を掴む。隣に立ってその手に自分から触れた。嵐はピクリと一瞬驚いたような顔をして、静かに「安心しろ」と言った。
「あとは任せた」
ぐいっと引っ張られるように肩に回された腕。
嵐は誰に向けて言ったのか。視線が向けられている先にいるのは真碕の仲間だと思ってた人たち。
その人たちは軽く微笑んだ。嵐の言葉に力強く任せろと言うように。
どうやら彼らは真碕側の人間ではなく嵐側の人間だったみたいだ。
あぁ、そういうことか。これで納得した。嵐が無傷でいられた理由もこれなら説明できる。
「怜央、俺は明日香連れて行く」
「俺も帰る」
「あぁ。分かった。アイツらがもう二度と馬鹿な事できねーようにケジメつけさせとけ」
「…ったく」
その集団の中で一人だけ特に目立つ。雰囲気がといえばいいのか醸し出す見えない何かが私には嵐と被って見えた。
気怠そうに息を吐き出してポケットに手をつっこみ取り出した煙草に火をつける。
"怜央"と呼ばれた人は嵐とどういう関係なのか。
他とはまた違う。なんていえばいいのか分からないけど、その呼び方も喋り方も慣れ親しんだようで二人には深い繋がりがきっとある。
私に友達はいらないと言った嵐。
あの言葉に嘘はない。今ならちゃんと分かる、けどモヤモヤするっていうのが正直なところで私の知らない嵐がいるのが嫌だった。
