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虞犯少年

第30章 そうして私たちは答えを知る




「何だよ?あんた。言いたい事あんならハッキリ言え」



喧嘩を売るような口調。冷めた瞳に睨まれて私はハッとする。その瞳は見下すようで見透かすよう。だけど青と緑かかった澄んだ色に思わず吸い込まれそうになる。



「いくらお前でも怒るぞ」



嵐は私を隠すように一歩前に出た。

見えなくなった彼がどんな表情を浮かべてるのかは分からないけど、あの瞳だけがどうも忘れられそうにない。それくらい印象的なものだった。



「あー、はいはい。めんどくせーな。もう」



心底めんどくさいと彼は漏らす。

嵐相手にこんな口調でこんな態度を取れるなんて、余計2人の関係が気になった。

足音が近づいてきて、隣に立つ。"怜央"は吸ってた煙草を地面に捨て火を消した。

深い色をした瞳とバッチリ合って逸らせない。

そして淡々とした物腰で言う。



「楠怜央。嵐とは幼なじみ。それ以上でも以下でもない。分かったか?」



やっぱり見透かされてたのかもしれない。私の気持ちを、彼は簡単に見抜いた。

私は首を縦に振って"分かった"と答える。

嵐に幼なじみがいた。一つ嵐を知れた。嬉しい気持ちと歯痒さが重なった。




「出よう。早く2人になりてぇ」



人目も気にせず、人の気も知らず甘く嘆く嵐。嵐はどこまでも嵐のまま。いつだって我が道を行く。

"怜央"は呆れたと言わんばかりに重い溜め息を吐いた。向けられた背。ちらっと一瞬だけ見えた。キラキラ輝く瞳が少し笑った、ように柔らかく色付いたのを。





そうして私たちは答えを知る

(まだまだ知らない事だらけなんです。)

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