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虞犯少年

第31章 本当は気付いてた



扉の先はいつの間にか日が沈み少し肌寒い。

微かに鼻に触る血の臭いと最後に聞こえた呻き声が頭から離れずにいた。

薄暗い倉庫から一歩外に出たら一気に現実に引き戻されたようで私は振り返る事なく嵐に肩を抱かれる。

倉庫の前に止まってる単車や車。嵐は車のドアを開けて私を押し込んだ。


こんな手荒くしなくたって、私は逃げたりしないのに…。


そして嵐も隣に乗り込むと車は発車する。

重苦しい空気に為す術のない私。

いろんな事がありすぎて、頭がついていってないのが現状。

嵐とだってどんな顔して話せばいいのか分からない。

守られていた。それは私のせいで傷付き、私の為に傷付いた人間が居るって事。

解放される訳がなかったんだ。

嵐の愛の重さを見てきた筈なのに私はその愛を舐めていた。



「嵐は…私を守ってくれてたの?」


「…他人に明日香を傷付けられんのは許せねぇ。自分の女くらい自分で守る」



真っ直ぐ芯のある声。目。言葉。
何の迷いはない。躊躇がない。
吸い込まれてしまいそう。
私はすでに嵐のもの。



「…全部知りたい。嵐の事…全部」



もう引き返せないだろう。

嵐に捕まった時からきっとこうなる運命だった。

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