
虞犯少年
第31章 本当は気付いてた
「アイツらは俺に情報が漏れてたなんて、んな事知らねーから上手くいくと思ったんだろ。先に俺が動けば明日香が危ない目に合わないって思ってたけど倉庫乗り込んだあの場に真碕はいねーし、明日香はもう拉致られてた。もっと早く知って動いてればお前を危ない目に合わせなかった…」
空白の時間。私が学校に居た時嵐はその手で何人の人を傷付けていたのだろう。
悲しみに満ちた瞳は私の頬を見つめさっきみたいに優しく触る。
「……俺が怖いか?」
不安げな嵐はらしくなくて、あの場面を見て怖くないと言えるほど私は強くもない。
でも今は――――
「…怖くない、よ」
今はもう怖くない。
さっきまでの嵐は怖かった。
本当にあのまま真碕を殺してしまうんじゃないかって恐怖に足がすくんだのも事実。でもその手に守られたって思うと愛しいよ。
「お前がいくら俺を拒んだって、俺は明日香無しじゃいらねーし考えられねぇ。だから責任とってそばに居ろ」
その責任は重かった。一生私は嵐のもの。
永遠の鎖に繋がれる。だけどいい。
私が一生嵐のものなら、嵐だって一生私のもの。
そうだった。私はすでに嵐の虜。
本当は気付いてた
(私の愛も歪んでいるのかもしれない。)
