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虞犯少年

第33章 涙は人が出す唯一きれいな液体です





嵐は顔を歪ませていた。

切羽詰まったその声は私の心をかき乱していく。切ない。

涙を拾う指が口調とは反対に優しくて、言葉にならなかった。


私はどうしようもない馬鹿だ。

ちゃんと伝わっているのに。

嵐は私に痛い程の愛を注いでくれてる。

あんな事言いたくなかった。言うつもりもなかった。

私は嵐の気持ちを踏みにじったんだ。

自分の思うように上手くいかないからって"信じれない"って言ってしまったようなもの。

"ごめんね"その一言が口から出ない。




「どうしたら分かるんだよ」


「っ、嵐」


「こんなに愛しても明日香にはなんも伝わってなかった」


「違っ…」


「違わねーだろ!!」



怒鳴る嵐に掴まれる腕がヒリヒリと痛む。嵐は怒ってるんじゃない。傷ついたんだ。

愛して欲しい。けど愛さない。

そんなの都合が良すぎるに決まってる。

見返りがない愛なんて辛い。

なのに嵐は一緒に居てくれた。

私を一番に考えてくれてた。

それがどういう事なのか、考えなくたって肌で感じれるのに。

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