
虞犯少年
第33章 涙は人が出す唯一きれいな液体です
「私…自分に自信がない」
「……」
「私なんかじゃなくても嵐には釣り合う人がいるのに…本当に私を好きでいてくれるのか、いつか捨てられるんじゃないかって、嵐に愛されるのが怖い」
「俺が好きなのは明日香だ。他にいねーよ。お前しかいない」
ほら、こうやって嵐はいつでも言葉にしてくれる。私に足りないものを埋めてくれる。
怖いのは嵐無しで生きていけなくなってしまいそうだから。愛に一生はない。
それでも嵐なら…嵐だけはずっと私を好きでいてくれる。
私だけを見てくれる。嵐との一生なら信じたい。
「―――嵐が好き」
今なら心から言えそうです。
口先だけじゃなくて心から。
好きの意味を、愛してるの意味を嵐に伝えたい。
膨れ上がっていた気持ちを言葉にしたら尚更、強く思った。
涙は相変わらず溢れるばかりで、それを拭ってくれる指は気のせいか震えていた。
嵐の顔を見る暇もなく力強く抱き締められた腕の中は苦しいくらいがちょうどいい。
嵐。嵐。声にならない代わりに心の中で何回も呼ぶ。息が詰まった。たった一言が精一杯。胸の奥が熱い。
認めます。
この気持ちは愛以外の何物でもない。
涙は人が出す唯一きれいな液体です。
(どんな濁った人間も透明な涙を流す。)
