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虞犯少年

第34章 虞犯少年




「…好き。大好き」



嵐は目を大きく開けて、まだ信じれないといったような顔をする。

嘘なんかじゃないよ。私、ちゃんと嵐が好きなんだよ。

言葉にしたって足りなくて、どうしたらこの気持ちが全部伝わるのか、自分から肌をすり寄せる術しか分からないから歯痒い。

噛み締めるように言葉を一つ一つ丁寧に吐き出して、棒立ちの嵐に抱きつく力を強めた。



「嵐が好き」


「……」


「嵐が大好き」



同じ言葉を何度も言う。陳腐な言葉にしか聞こえないかもしれない。他にこの気持ちを言い表せる最大級の言葉があればいいのに、"好き"以外このどうしようもない感情を救えるものはない。

反応を示さない嵐に少し不安になった私は顔を覗き込んだ。



「本当だよ?私、嵐が好―っ」



目と目が合った瞬間、何も考えられなくなる。

私の溢れんばかりの気持ちを飲み込むように止めたのは嵐の熱い唇。

一瞬の暇さえ与えられないくらい深いキスに身が熱くなる。

ベッドにゆっくり倒れ込み、目を開けた時。私を見下ろす嵐の瞳はいつものぎらつきがなかった。

代わりにその瞳に宿るものは獣なんかじゃなくて人間らしい優しいもの。切なげな眼差しに揺れる。

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