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虞犯少年

第10章 隠し言葉




「明日香」



機嫌がよさそうな嵐は甘い声で私の名前を呼んだ。多分、機嫌がいい理由はやっぱり私がバイトを辞めたからだろう。


"これでもっと一緒に居れるな"


そう言われた時、私の自由が全て奪われたことを知った。


はぁー。苦しい、息が詰まる。



「―――っふぁ」



右手は後頭部と髪の毛を掴んで左手は腰にまわる。密着して、キスをして、鼓膜にまでやらしい音が響く。うるさい。
吸いにくい酸素がもっと吸いにくい。暴れる舌がぺろりと私の唇を舐めた。そしてまた重なる。



「――――おい、嵐」



ドアの外から声がする。部屋の前にいる嵐を呼ぶ声は今まで聞いたことがない男の人の声。……誰?ふわふわとする頭でも誰か分からない存在によって目が覚めたよう。

嵐に"やめて"の意味を込め胸を押した。

だけど嵐はキスをやめるどころか更にゴツゴツした手を服の中に入れる。あの声が聞こえてない訳ないのに止まる様子はない。

精一杯抵抗を見せても、私の力と嵐の力とでは比べものになる訳がないんだ。

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