
虞犯少年
第10章 隠し言葉
「―おいおい、最中かよ?」
ドア越しだった声がすぐそこから。直に耳に入る声はどこか嵐に似てる気もする。
嵐は最後まで味わうようにして、やっと私から離れた。乱れた服を素早くなおす。
ギロリと嵐が振り返った先と私が見た先に立つ人物は、ニヤリと笑う。
「今からヤんだよ。邪魔すんじゃねー」
威嚇するような低い声は嵐のもの。
「弟のヤッてるとこ見るのって複雑だな」
ヘラヘラとした表情と声は嵐の…お兄さん?
弟と言った時点でそれは確信に変わった。
どこか違う。でも似てる。
顔が特別似てる訳ではないのに、取り巻く雰囲気が嵐と同じ。
話では耳にしてた嵐の兄。
初めてこの目で見た嵐の家族。
「なんでいんだよ」
「自分の家だから」
「は?さっさと出てけ」
「久々に会って言う言葉ってそれかよ」
