
虞犯少年
第11章 切り裂いて笑う
「男と喋ってねぇよな?」
「うん。喋ってない」
「ならいい」
毎日繰り返されるその度に私が答える言葉は最初から決まっていた。
男とは話していない。目も合わせない。だから大丈夫。心配しないで。
何度も何度も繰り返す。声とは違った思いを押し殺して言われた通りにする私も私。分かってる。彼には誰も逆らえないことなんて。
愛しそうに扱われる度、私は苦しくなることなんて嵐は知らない。知らないことが多すぎる。私がどんな気持ちでいるのか、その手に触れるのか。
「あれ九条嵐じゃね?」
「うっわ!まじだ」
道端に溜まる金髪2人組の男の人たちの目は私たちを捉え、確かに"九条嵐"という名前が聞こえた。なのにその本人はぴくりともしないから可笑しい。
