
虞犯少年
第11章 切り裂いて笑う
「誰の女に物言ってんだよ!!」
完璧にキレてしまった嵐。彼は誰にも止められない。
「っお願い!やめて。死んじゃうよっ!!」
勿論、私にも止める術なんてなかった。必死になってカラカラになる叫びも届くことはない。
苦しそうな呻き声に私はぎゅっと強く目を綴じた。
何もできない私は無力で、嵐が怖くて、力無くその場に座り込む。
「安心しろ。殺してねぇ」
そっと開けた先には血に染まる瞳がギラギラとして尚も飢えているみたい。
「アイツらは見る目がない」
「………」
「でも俺だけが明日香の良さを理解してりゃいい話だ」
「………」
「他の奴は知らなくていい」
「………」
「お前は俺のだ」
私の頬に触れるその手からは生々しい臭いがした。赤い液体が滲む。非現実的さに確かな色が帯びた。
流れる血は争えない。
切り裂いて笑う
(上手く笑えそうにはない。)
