テキストサイズ

虞犯少年

第12章 閉ざされし場所




ふつふつと悲しみが一つ、二つ。涙となって零れ落ちる。


無意識のうちに私は携帯を片手に握り締め耳に押し当てていた。



「――どうした」



その声を聞いた瞬間、何かがぷつりと切れた。私の中で保とうとしていた"何か"が音を立てて崩れ落ちる。



「っ、ここから…私を連れ出して――」



涙声はしっかりと嵐に届いたのだろうか。

誰でもいい。こんな息苦しい世界からさらってくれるなら。誰でもよかった。


求めたのは大嫌いな君。
大嫌いなのに、一番に浮かんだ。
一番、信用できた。変な話だ。
嵐の隣も息苦しいのに、こんな部屋に居るよりも嵐の隣を選ぶなんて…



「泣くのは俺の前だけにしろ」


「っ、」


「今すぐ行く。お前が望むならどこにでも連れさらってやっから」







閉ざされし場所

(その声があまりにも優しすぎて。)



ストーリーメニュー

TOPTOPへ