
虞犯少年
第14章 キミの肌に噛み傷を
嵐の携帯は買ったままの飾り気がない着信音がよく鳴り響く。
今もプルルル…と脳裏にこびりつきそうな音が鳴っていた。
よほどの事がない限り嵐はその電話に出ない。さっきから何度も何度も鳴り止まない音は相当、切羽詰まっているのか嵐が出ることをただ待っているみたい。
嵐は苛々しながらも仕方なさそうに携帯を耳にあてた。その横で私は下着をつけて服を着る。
「……なんだ」
電話先の相手の声が漏れる。賑やかというよりもその場はガヤガヤとうるさい。
怒鳴り声のようなものが飛び交ってる様子が浮かぶ。微かに聞こえてくる音に私は不安を覚えた。
「あ?なんでだよ。邪魔すんな」
そう言って、一旦電話を切ったもののすぐにまたかかってきた電話に嵐は淡々と冷たく"分かった"とだけ言って携帯と煙草をポケットにつっこんだ。
「…どうしたの?」
「明日香は知らなくていいことだ」
「……」
「ここにいろ。すぐ戻ってくる」
こくん。と小さく頷けば嵐は小さく笑みをこぼして行ってしまった。
嵐は私に自分以外の人間が近付くことを酷く嫌がるから、嵐の友達関係とかそういうのはよく分からない。
私のことは一つ残らず知りたがるくせに…
私は嵐の何を知ってるんだろう。
ぼんやりする頭の中でそんなことばかり考えても答えなんか見つけられそうにもないから途中で投げ出した。
ベッドからひんやりした床に足をつけると少し身震いがして、嵐の部屋からそっと出る。リビングのソファーに深く腰をおろせば時計の音だけがヤケに耳に響いた。
