
虞犯少年
第14章 キミの肌に噛み傷を
「名前なんていうの?あ、俺は新ね」
「明日香…です」
「明日香ちゃんかー。可愛いね」
気付いたら新さんは隣に座っていた。香水の香りが鼻を刺激する。ぐんと近くなった距離に少し身を引こうとしたら新さんの手が私の腕を痛くない程度に掴んでソレを阻止した。
「な、んですか」
「んー?なんか気になって」
真っ直ぐに見つめてくる瞳が嵐とかぶるけどやっぱりどこか違っていて。
ニコリと微笑んでみるくせに、私を捉えるその目は笑っていない。
「すげぇ痕。アイツ、独占欲強いでしょ?」
ハハっと妙に乾いた笑い声。首筋に広がる赤い痕が見えたのか新さんはその痕を指で撫でた。嵐の手はどちらかっていうと冷たい。けど新さんの温度は反対に熱いくらいだった。
撫でられた私はピクリと反応してしまい、クスクス笑われて思わず顔を伏せる。
「それって誘ってんの?」
「…え」
「男は狼なんだから気をつけな」
「は、い」
「―って、もう手遅れか」
何が起きたのか数秒間、理解出来なくて戸惑う。ソファーにずっしりとした重み。
掴まれた両腕はさっきよりも痛かった。
私の上に覆い被さる新さん。
「人のものほど欲しくなっちゃう、ってね。嵐を骨抜きにさせたその体、俺にも味わわせてよ」
口調は優しく、甘みのある声。
視線がぶつかる。
本気なのか冗談なのか分からない。その瞳はやっぱり鋭くて。熱い体温が重なった。
キミの肌に噛み傷を
(痛いくらいが丁度いい。)
