
虞犯少年
第15章 途絶えた安楽
睨み合う二人の放つオーラは私から見ても尋常じゃない。さすが元暴走族の総長。嵐だって負けを劣らない。胸ぐらを掴んで食いつく。その光景で私だけが取り残されたみたい。静かにごくりとのどを鳴らした。
「明日香は俺のだ」
「だからなんだよ。お前の一方的な独占欲で明日香ちゃんを苦しめんな」
尖って的を外さない。鋭い瞳。
嵐がどんな顔をしているのか見えない。
「明日香ちゃん、またね」
馴れ馴れしいくらい。だけど違和感がない。新さんは何事もなかったかのように家を出て行った。
どうすれば丸く収まるのか考えることは救われる方法。考えても考えても浮かばない。じっとりとした汗が手の中で広がる。
声にならなかった。
振り返った嵐の瞳が見下すようであまりにも冷めたい。背筋が凍る。
「よそ見すんなっつったよな?」
他でもない嵐によって
我慢してた筈の涙が、零れた。
途絶えた安楽
(できることなら苦しまず楽になりたい。)
