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虞犯少年

第15章 途絶えた安楽






「おい!!」



うごめく。重く低い声はたった一言でも伝わってくる。嵐の声。今までにないくらいの怒りがこもってる。血の気が引くのを感じた。火照った体も一気に寒いくらい。私はその場で固まって、一体何が起きるの?と傍観してるしかなかった。


嵐の拳が新さんの頬に傷を作る。殴られた新さんは右手でその傷に触れ顔をしかめた。



「…いって」


「明日香はそこらの女とは違ぇんだよ!!いくら新でもぶっ殺すぞ!!」



私が他の男の子と喋った時よりも、知らない人に馬鹿にされた時よりも、そんなのとは比じゃないくらい嵐はキレていた。

それを目の前にして私は怖いという感情なんかじゃ表せれないものに支配される。

息を呑み込んで、止めた。
心臓の音がうるさい。
振り上げられた嵐の拳を新さんは難なく止める。嵐は驚いたように舌打ちをした。



「一発はくらってやるけど、二発目は無理。結構痛ぇーし。嵐も強くなったな」


「今はそんな話じゃねーだろ」


「んな、怒んなって。」



ヘラヘラと笑う。今、この場に適してない態度は嵐の怒りを逆撫でするしかない。だけど新さんは余裕そう。本当に、よめない。



「俺は謝んねー」


「あ?」


「本気になったって言ったらどうする?」








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