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虞犯少年

第18章 キミが居ない世界に価値はない




一人になっちゃったよ…


もう誰も、私なんか必要にしない。
私はいらない。





「―――明日香」



温もりを感じた。逞しい腕。骨。筋肉。なんで、この人だけは私に手を差し伸べてくれるのだろうか。似合わない優しさをこういう時ばっか見せてくるのだろうか。憎くて嫌いな筈なのに、嵐なんか知らない。どうだっていい。入ってこないで、私の中に。弱さをこれ以上見せたくない。好きになんてなりたくない。なのに、すがりついた。甘えてしまう。何度も何度も傷つけられただけ私は嵐に染められていく。



「っ友達、いなく…なっちゃった…」


「んな奴らいらねーだろ?俺がいんだから明日香には友達なんかいらねぇ。必要ねぇ」


「けどっ…寂しい」



言葉にした分、ぐっと切なさが広がっていく。あぁ、私は寂しかったんだ。寂しくて寂しくてどうしようもなかった。家にだって居場所がなくて、学校にもなくなってしまった。私はこれからどうすればいいの?誰も必要としてくれないなら、私がいる意味なんてなくなってしまうでしょ。



「俺は絶対離れない。
明日香を一人にしない」


「っぅ…」

「誓ったっていい。俺は明日香さえいりゃあ問題ねぇ」



誓いのキスは涙でしょっぱかった。唇から伝わってくるものがトゲを溶かしていくように、じんわりと空いた透き間を埋めていく。


こうやって私は嵐に依存した。







キミが居ない世界に価値は無い

(だって、そうでしょ?二人だけの世界)

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