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虞犯少年

第21章 君だけだよ




頭の中はめちゃくちゃで、ポロポロと涙なんか流れてくる始末。

なんで泣いてるのかさえも自分には分からないくらい冷静を取り繕う暇がない。

肩で息を吸いながら後悔の二文字を背負う私の涙を拾う指は優しかった。

まるで金縛りにあったように体は重くて動かない。

それをいいことに嵐は私の顎を掴んで目と目が合う。

ぼやける視界の先に映る嵐は不覚にも綺麗だと思うほどの笑みを浮かべていた。それは怖いくらい。ごくり唾を飲み込む。



「アイツらはなんでもねぇ。明日香がもう二度と話すなっつーなら話さねぇよ」


「……嘘…」


「お前が思ってるような間柄じゃない。興味ねぇ。気に食わないなら消すか?」


「っそうじゃなくて…」


「明日香、お前さえいれば他なんて必要ない。そう言ったよな?友達も家族もそんなもんはいらねー。俺には明日香だけだ」



力強く言い切る。どこにも迷いはない。

平然と「消すか?」なんて恐ろしい事を言い放つ。

消すとか消さないとかそんなんじゃなくて。

そういうものが欲しいんじゃなくて。

私が嵐にとってどういう存在で特別なのかがただ知りたかっただけ。


周りからすれば何最低な事を言ってるんだと思うかもしれない。理解できない。そう思うのが当たり前だ。

なのに私は違った。

私からすればこれ以上にない愛の言葉に聞こえて、嵐にも私だけなんだ、よかったと安心してる自分がここに居る。だって私にはもう嵐しかいないんだから。"同じ"じゃないと釣り合わないでしょ?

そんなの不公平。




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