
虞犯少年
第21章 君だけだよ
「本当に?」
「あぁ。嘘なんかつかねー」
「嵐にも私だけ?」
「何回だって言ってやる。明日香さえ居りゃあ、それでいい。」
「…うん」
額を胸に押し当ててギュッと抱き合う。
安心させて欲しかった。どんな形でもいいから、対等でいたい。
「嫉妬した?」
「…」
「ムカついたんだろ?俺に」
「…嵐だけにじゃない。あの人たちにもムカついた」
「――やばい。お前可愛すぎ」
耳元で囁く声は色っぽい。見上げて見た嵐は柔らかい表情で私を見つめてる。こんな嵐を見れるのはきっと私だけ。
嫉妬なのか何なのかよく分からないけど、このモヤモヤして醜い気持ちに名前がつくなら、それが嫉妬だというなら、私は嵐に嫉妬した。私だけを見て欲しい。その感情が束縛だとも気付かずに堕ちていく。その手からは逃げられない。
「もう喋んないでね」
「分かった。んな可愛い我が儘ならいくらだって聞いてやる」
嵐が本当に嬉しそうに笑うもんだから、私も自然と嬉しくなる。
嵐さえ居れば他なんていらない。
そう言った唇は荒々しいキスで塞がった。
君だけだよ
(これから先もずっと。)
