
虞犯少年
第22章 見えないから残酷に響く
「もっと俺だけを愛してよ」
言葉が似合うのは変でありえないことなのに、あの九条嵐が女相手に弱味を見せている。嵐らしくない。そう言ってしまえばそれまで。だけど私に新しい感情を与えた。愛しい。暗くてハッキリとした表情は読み取れないけど目を細めて私を見つめる嵐のそれから感じるものは切なさだった。吸い込まれるように自分からキスを交わす。ぴちゃぴちゃ。耳に残る音は水が跳ねる音なのかそれとも求め合っている証の音なのか。
「すげー勃ち。出るぞ。こうなったのは明日香のせいだからな」
ニヤリ、笑う顔はすでにやる気満々。きっと明日になってもその腕から逃れられない。ベッドに沈む体に勢い良く覆い被さる嵐は髪の毛も濡れてるせいでいつも以上に色っぽい。
「恥ずかし、い」
「なんで?俺に感じてんだろ?」
「違っ…」
「違くねーよ。ほら、もう二本くっちゃった。感じてないならこんなんなんねーよ?」
「あ、んっは」
「舐めていい?」
「っ、やぁ!!」
「嫌じゃねーだろ」
ぺろり。真っ赤な舌を見せる。味わうように時間をかけて反応を見ながらこうやって私の羞恥心を煽る。顔が、体が熱い。
「ひゃ、はぁっあ!!…嵐…んっ」
「…イかせてやる」
嵐は自身をあてがたい一気に挿れた。最初から激しくて、ついていけそうにない。腰を押し付けるように上下に揺れる。奥の奥まで突かれて、私は大きく仰け反った。軽く2回はイッたというのに嵐はまだ足りないと腰を振る。ねっとりとしたキスは何の液体かも分からない。本能のまま求め合うセックスに欠けていた愛は気づかぬうちに芽生えていた。
けれど私はまた絶望を味わう。
今だけはどうか嵐の腕の中で
幸せな夢を見ていたい。
見えないから残酷に響く
(それが愛ってものなんでしょ?)
